ケトアシドーシスは、放置すれば数日、早ければ数時間で命を奪う病態ですが、体は必ず破壊的な前兆サインを発しています。発症初期に現れるケトアシドーシスの初期症状をいち早く捉えられるかどうかが、救命の絶対的な分水嶺となります。
初期段階における代表的な兆候は、耐え難い異常な喉の渇き(口渇)と多尿・頻尿です。血中に溢れた過剰なブドウ糖が腎臓の再吸収能力を超えて尿中へ排泄される際、浸透圧利尿によって大量の水分と電解質が体外へ奪われます。脱水が急速に進行するため、患者はいくら水を飲んでも乾きが癒えない感覚に襲われます。
さらに代謝破綻が進行すると、特有の消化器症状と呼吸異常が現れます。救急外来の現場で医師が警戒する重要な警戒サインが、以下の4点です。
- 呼気の「アセトン臭」:ケトン体の構成成分であるアセトンが肺から気化して排泄されるため、「甘酸っぱい腐ったリンゴのような匂い」や「除光液、マニキュアの除光剤に似たツンとする揮発臭」が口臭として漂います。家族や周囲の人間がこの異臭に気づいて通報するケースが後を絶ちません。
- クスマウル呼吸(大呼吸):酸性に傾いた血液を中和するため、脳の呼吸中枢が過呼吸を指令します。深く、苦しそうに激しく空気を吸い込む異常な呼吸パターンが観察されます。
- 激しい腹痛・嘔気(糖尿病性仮性腹膜炎):アシドーシスそのものや電解質異常、胃腸管の脱水により、虫垂炎や急性膵炎と誤認されるほどの激痛や嘔吐を伴います。
- 急速な意識障害:初期の倦怠感や脱力感から、やがて傾眠、見当識障害、昏睡(DKA昏睡)へと移行します。