動物病院の皮膚科外来には、「最初は少し舐めている程度だったのに、気づいたら足先が真っ赤に腫れ上がり、血がにじんでいた」と駆け込む飼い主が後を絶ちません。SNSやペットコミュニティの投稿でも、「ただの暇つぶしの癖だと思って放置していたら、毛が抜けて肉球が象の皮膚のように硬化してしまった」という痛切な体験談が数多く報告されています。
犬の足舐めがエスカレートすると、犬が足を噛む・むしる行動へとシフトしていきます。これは痒みや不快感が神経伝達の閾値を超え、自傷行為に近い状態に達している証拠です。この段階に至ると、犬自身も舐める行為を自制できなくなります。
特に難治性として知られるのが肢端舐性皮膚炎と舐め壊し(したんしせいひふえん)です。これは前足の前面(手根部付近)をしきりに舐め続けることで皮膚が肥厚し、潰瘍や硬結(しこり)を形成する病態です。舐めることで脳内からエンドルフィン(多幸感をもたらす神経物質)が分泌され、一時的に不安が紛れるため、舐める行為そのものが強迫神経症的な依存行動として定着してしまうという極めて厄介なメカニズムを抱えています。