裁判で開示された供述調書や証言から見えてくるのは、稚拙な男女間トラブルから取り返しのつかない集団凶行へと雪崩れ込んだ現場の異常な空気です。
報道関係者の取材記録や法廷提出資料によると、八木原被告が抱いていた動機は「被害者との別れ話をめぐるいざこざや、過去の交際態度に対する不満」という極めて個人的な感情でした。しかし八木原被告は、その不満を自らの対話で解決するのではなく、友人の川村葉音被告へ感情的にぶつけました。これに憤慨した川村被告が交際相手の少年らを現場へ招集したことで、事態は八木原被告の手を離れ、暴力的な集団リンチへと変貌を遂げていきます。
公判における八木原被告の供述内容では、「暴行が始まったときは怖くて声が出せなかった」「まさか死ぬとは思っていなかった」と述べられ、自らの意図せぬ方向へ事態が暴走したとするトーンが目立ちます。一方で、先行公判における少年らの証言では、「八木原被告も被害者を罵倒していた」「長谷さんの財布やカードを巡るやり取りを八木原被告も見ていた」といった証言が飛び交っており、供述の食い違いは歴然としています。
特に検察側が追及しているのが、「被害者の所持品からキャッシュカードを抜き取り、暗証番号を聞き出す場に八木原被告がどのように関わっていたか」という点です。八木原被告が暴行を認識しながら暗証番号の聞き出しに同調・容認していた事実が裏付けられれば、暴行と財物奪取の一体性が立証され、強盗致死罪の成立を免れることは困難になります。