音楽という強力な武器をあえて手放した彼に訪れた最大の試練であり、決定的な飛躍の契機となったのが、世界的人気コミックの実写映像化プロジェクト『【推しの子】』における主人公・アクア役への抜擢でした。
このキャスティングが発表された際、ネット上では一部から「また大手事務所と二世枠のゴリ押しではないか」「アクアの持つ底知れぬ復讐心や冷徹さを演じきれるのか」といった懸念の声が噴出しました。しかし、実際に本編が世に出ると、その評価は180度覆ることになります。
桜井海音が演じたアクアは、芸能界の闇に翻弄されながらも冷徹に策を巡らせる復讐者としての冷気と、心の奥底に抱える繊細な脆さを完璧に体現していました。特にカメラを見据える濁りのない視線、感情を押し殺したドスの利いた台詞回しは、原作ファンからも「アクアの孤独と業を完全に理解している」と絶賛を浴びました。
奇しくも『【推しの子】』という作品自体が、「芸能人の子どもとして生まれ、出自の秘密と業界の不条理に向き合う」というメタ構造を持っています。父親の巨大すぎる背中を視界に入れながら育ち、自らのアイデンティティを探求し続けてきた桜井海音自身の人生経験が、アクアという難役に唯一無二のリアリティと説得力を宿らせたことは疑いようがありません。