「部屋から一歩も出ず、身体を休めていたのになぜ疲弊するのか」という疑問に対し、神経科学分野が提示する明確な答えがデフォルトモードネットワーク(DMN)の過剰稼働です。DMNとは、人間が意識的な作業や運動を行っていないアイドリング状態のときに活性化する脳内ネットワークを指します。脳科学研究の公表データによると、人間の脳が消費する総エネルギーのうち、意識的な集中作業に使われる割合はわずか5%程度に過ぎず、全体の60%から80%はDMNをはじめとする安静時の維持活動に消費されています。
休日にベッドの中で天井を眺めている間も、脳は過去の後悔や未来への不安、未処理のタスクを自動的に検索し、雑念を巡らせ続けています。意識としては「何もしていない」つもりでも、生化学的にはエンジンの空ぶかしを延々と続けてガソリンを撒き散らしている状態に近いのです。この脳疲労の蓄積こそが、何もしないのに疲れる原因の根底にあります。
さらに、休息時の姿勢そのものが血流不全を招く物理的要因も重なります。長時間ソファや布団に寝転がったままでいると、第二の心臓と呼ばれるふくらはぎの筋ポンプ機能が働かず、全身の血行が著しく低下します。筋肉を使わないことで乳酸などの代謝産物が局所に滞留し、脳へ送られる酸素量も減少するため、結果として「運動もしていないのに身体がだるい」という逆転現象が完成します。