小児科外来や行政の乳幼児訪問の現場で、助産師や小児科医が最も頻繁に受ける相談のひとつが「赤ちゃんが視線を合わせてくれない」という切実な告白です。母親たちの手記やSNS、育児コミュニティの投稿を紐解くと、産後の極限状態の中で孤立し、不安を増幅させていく親たちの姿が克明に浮かび上がります。
「授乳のたびに胸元から見下ろしているのに、赤ちゃんはいつも私の喉元や天井の照明ばかり見ている」「抱っこして話しかけても、視線がスッと外れて虚空を漂っている。母親として愛されていないのではないか、拒絶されているのではないかと涙が止まらなくなった」――こうした声は決して珍しいものではありません。
特に第一子を出産した親の場合、睡眠不足とホルモンバランスの乱高下が重なる時期に、スマートフォンの検索機能へ依存してしまう傾向が顕著です。検索アルゴリズムは往々にして、利用者の不安を刺激する極端な症例や過剰な医療情報を上位に提示します。その結果、「生後1ヶ月なのに目が合わない=自閉症」という短絡的な誤情報に囚われ、目の前にいる我が子の自然な成長プロセスを見失ってしまう悪循環が発生しているのです。
現場の小児科医は口を揃えて語ります。「授乳中に目が合わないのは、赤ちゃんが飲むこと自体に全力でエネルギーを使っており、視覚情報まで処理する余裕がないからです」。大人であっても何かに集中しているときに視線がぼんやりするように、乳児にとっては「生きるための動作」をこなすだけで脳のキャパシティは飽和しています。親を拒絶しているわけでも、発達に異常があるわけでもありません。