馬の妊娠期間は約335日!人間との違いや双子が危険な理由を徹底解説

馬の妊娠期間は約335日!人間との違いや双子が危険な理由を徹底解説

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競走馬のニュースや牧場のSNSを見ていると、出産シーンの報告が2月から5月の「春」に圧倒的に集中していることに気づきます。これには、生物学的なホルモン機構と競馬界特有の制度設計という2つの強力な理由が存在します。

第一の理由は、馬が「長日性季節繁殖動物(ちょうじつせいきせつはんしょくどうぶつ)」であるという点です。野生の馬は、日照時間が長くなる春から初夏にかけて繁殖活動を行います。メカニズムとしては、網膜から入る光の刺激によって脳の松果体からのメラトニン分泌が抑制され、視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が分泌されます。これにより卵巣機能が活発化し、繁殖牝馬は規則的な発情周期を迎える仕組みです。

妊娠期間が約11ヶ月であるため、春(4月〜6月)に受胎した牝馬は、翌年の同じ春(3月〜5月)に出産を迎えます。春は厳しい冬が去り、大地に青々とした栄養満点の牧草が芽吹く季節です。母馬は豊富な青草を食べて良質な母乳をたっぷりと出し、仔馬は温暖な気候の中で体力をつけながら冬に備えることができます。これ以上ないほど合理的な自然の摂理です。

第二の理由は、競馬のルールに起因する「種付け時期の人為的コントロール」です。国際競馬統括機関連盟(IFHA)の規定に基づき、日本を含む北半球の競走馬は、実際の誕生日が何月であっても「1月1日を迎えるごとに一律で馬齢が1歳加算される」という厳格なルールがあります。

競走馬のデビュー戦(2歳夏〜秋)において、同じ「2歳」であっても、1月〜3月に生まれた仔馬と、5月〜6月に生まれた仔馬では、骨格の発育や筋肉量に数ヶ月分の圧倒的な体格差が生じます。レースで有利に戦うため、生産現場では可能な限り早い早春(2月〜4月)に出産させたいという強い動機が働きます。

そのため、牧場では冬の11月頃から厩舎の照明を夜間も点灯させて日照時間を人工的に再現する「ライトコントロール(光線管理)」技術を駆使します。牝馬のホルモンバランスを2ヶ月ほど前倒しで活性化させ、本来の繁殖期よりも早い2月中旬から種牡馬の「種付け」を開始するのです。この高度な生産技術によって、2月から4月にかけての「出産ラッシュ」が生み出されています。

池田 達也
著者

池田 達也

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。