フィットネスブームの広がりとともに、スポーツ整形外科やリハビリ現場で急増しているのが、サイドレイズやショルダープレスをやり込んだことによる肩の慢性炎症です。その根本原因は、肩の痛みとインピンジメントの経緯を解明すると浮き彫りになります。
肩峰下インピンジメント症候群(Subacromial Impingement Syndrome)とは、肩峰の下面や鳥口肩峰靭帯と、上腕骨頭の間にある「肩峰下腔」が狭くなり、その間を走る棘上筋腱や肩峰下滑液包が挟み込まれて摩耗・炎症を起こす病態です。
ネット上のトレーニング情報では「三角筋中部を効かせるには、親指を下に向けて小指側を高く持ち上げろ」というアドバイスが長年語られてきました。いわゆる「空の缶を捨てる動き(Empty Can)」に近いフォームです。しかし、日本整形外科学会などの学術的な知見や運動器バイオメカニクスにおいて、肩関節の内旋位(親指を下に向ける)での外転動作は、上腕骨の大結節を肩峰に最も衝突させやすい極めて危険なアライメントとされています。
肩甲骨は体幹に対して完全な真横(前額面)ではなく、解剖学的に約30〜40度前方に傾いて位置しています。この角度を「肩甲骨面(スキャプラプレーン)」と呼びます。真横に腕を開いて内旋させる不自然な負荷をかけ続けると、三角筋粗面が引っ張られる以前に、関節包内でインピンジメントが反復され、やがて棘上筋腱の断裂や石灰沈着へと進行してしまうのです。肩の痛みを感じた際は、三角筋の筋力不足を疑うのではなく、アライメントの破綻による挟み込みを疑うことが臨床現場の常識となっています。