物語は、主人公である「私(こだま)」が18歳の大学時代、のちに夫となる男性と出会った夜から始まります。初めて身体を重ねようとした瞬間、なぜか彼のペニスがどうしても入らないという異常事態が発生しました。痛みと焦り、困惑が交錯するなか、「慣れていないだけ」「いつか入るだろう」と楽観視していた二人でしたが、その状態は月日が流れても一切改善しませんでした。
大学卒業後、周囲に急かされるように二人は結婚を選択します。しかし、医学的な検査を受けても明確な器質的異常は見つからず、「性交障害」という身体の不一致が重い影を落とし続けます。小学校教員となった著者は激務とストレスで心身をすり減らし、やがて鬱状態に陥り休職・退職へ追い込まれるなど、過酷な現実が容赦なく襲いかかります。
子どもを持てないことへの親族からの無言のプレッシャー、普通ではない自分を責める自己嫌悪、そして誰にも相談できない孤独。本作は、夫婦の寝室という密室のトラブルが、人生全体をいかに侵食していくかを痛切なリアリティをもって描き出しています。