下茹でが完了した直後、プロのレシピには必ずと言っていいほど「肉を取り出し、ぬるま湯や流水で表面を丁寧に洗う」という記述が登場します。せっかく温まった肉を冷水にさらす行為に疑問を持つ人も少なくありませんが、この工程を省くことこそが「タレが濁る」「食べた瞬間に酸化した嫌な脂の匂いが鼻に抜ける」という重大な失敗の原因です。
下茹で中の茹で汁には、肉から溶け出したアク(変性タンパク質)、凝固した血液、そして熱によって酸化した劣化したラードが大量に浮遊しています。肉を引き上げる際、それらの不純物が肉の表面や脂身の細かなキメにベットリと付着します。これを洗い流さずに本煮込みの調味液に入れてしまうと、調味液全体に酸化臭が拡散し、雑味だらけの後味になってしまいます。
流水や40℃程度のぬるま湯で、肉の表面を手で優しくなでるようにして白い油脂のカスや茶色いアクを洗い落とすこと。これによって肉肌が美しく整い、本煮込みの調味料がクリアに染み渡る土台が完成します。
また、下茹で前の豚バラブロックの下処理にも2つの鉄則があります。
- 大きめに切り分ける:肉は加熱と下茹でによって水分と脂が抜け、体積が約30%〜40%収縮します。一口大に切ってから下茹ですると、仕上がり時には貧弱なサイコロ状になりパサつきを感じやすくなります。下茹で前の段階では、最低でも5〜6cm角以上の大ぶりに切り分けておくのが鉄則です。
- 焼き付け(焼き目)の是非:表面を強火で焼き固めてから下茹でするレシピが存在しますが、本格的なトロトロ感を極めるなら「焼き付けは不要、またはごく軽く表面の脂を落とす程度」に留めるのが賢明です。過剰なメイラード反応を起こして肉の表面を硬化させると、下茹で中に余分な脂が抜けにくくなり、水分も吸いにくくなるリスクを孕むためです。