多発性筋炎を疑った際、医療現場で最初に行われるスクリーニングが血液検査です。筋肉細胞が炎症によって破壊されると、細胞内に蓄えられていた酵素が血液中へ大量に漏れ出します。その最も代表的な指標が「CK(クレアチンキナーゼ)」です。
健康な成人の血清CK基準値はおおむね50〜200 U/L程度ですが、多発性筋炎の活動期においては、これが数千から場合によっては1万 U/Lを超える異常高値を示します。同時に、AST(GOT)、ALT(GPT)、LDHといった一般的な健康診断で「肝機能の異常」として扱われる数値も筋肉由来で跳ね上がるため、健診で肝機能障害を指摘されたことをきっかけに膠原病内科へ紹介され、病名が判明する例も少なくありません。
近年の診断技術において極めて大きな進歩を遂げたのが「筋炎特異的自己抗体(MSAs)」の測定です。日本リウマチ学会や国際的なコンセンサスに基づき、2026年現在の診療現場では網羅的な抗体パネル検査が保険適用のもとで日常的に実施されています。
- 抗ARS抗体(抗Jo-1抗体など):多発性筋炎・皮膚筋炎に幅広く見られ、関節炎や「機械工の手(手の指が硬く荒れる症状)」、慢性的な間質性肺炎を合併しやすい「抗合成酵素症候群」を形成します。ステロイドに対する反応は比較的良好ですが、再燃を繰り返しやすい特徴があります。
- 抗SRP抗体:筋肉の破壊が急激かつ重症で、筋力低下が急速に進む「免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)」と密接に関連します。ステロイド単剤では抵抗性を示すことが多く、初期から強力な集約的治療が求められます。
- 抗HMGCR抗体:脂質異常症治療薬(スタチン系薬剤)の使用歴に関連して発症することがある壊死性ミオパチーで検出されます。
これらの血液検査に加え、筋肉の炎症部位を可視化する大腿部や上腕の「MRI検査(STIR画像)」、異常な自発電位を捉える「針筋電図検査」、そして確定診断のために大腿や上腕から筋肉組織の一部を採取して顕微鏡で観察する「筋生検」を総合的に組み合わせ、最終的な診断基準への合致を確認します。