「疲れているなら、とにかく眠ればいい」「休日は昼過ぎまでベッドから出ないのが一番の贅沢」――ネット上ではこうした休息法が広く信じられていますが、医学的な観点から見ればこれは大きな間違いです。
睡眠医療の専門領域において、平日の睡眠不足を補うために休日に起床時刻を2時間以上遅らせる行為は、ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)を引き起こす主因として警告されています。例えば、平日は朝7時に起きている人が休日に午前11時まで眠り続けた場合、体内時計は「時差が4時間ある海外へ飛行機で移動した」のと全く同じ混乱を生体に強いることになります。
体内時計の中枢である視交叉上核は、起床時に網膜から入る太陽光によって毎朝リセットされ、約14〜16時間後にメラトニン(催眠ホルモン)を分泌するようプログラミングされています。休日の朝寝坊によってこのシグナルが遮断されると、夜になってもメラトニンが正常に分泌されず、日曜の夜に不眠へ陥ります。結果として、月曜日の朝に「休んだはずなのに最悪の体調で目覚める」という地獄のサイクルが完成するのです。
睡眠負債の解消法として有効なのは、起床時刻を遅らせることではなく、就寝時刻を前倒しにすること、そして不足分は午後に20分前後のパワーナップ(昼寝)で補う運用です。休日に寝床で長時間ゴロゴロと過ごす行為は、睡眠の質を希釈させ、かえって自律神経の協調性を破壊する行為に他なりません。