室内や庭先で見かけた際、瞬時に正体を特定するための最大の識別ポイントは、足の生え方(体節の構造)と動きの速さ・刺激への反応です。パニックにならず、まずは数秒間だけ相手の歩行速度や姿勢を観察してください。
生物学的な分類において、ムカデは「唇脚綱(しんきゃくこう)」、ヤスデは「倍脚綱(ばいきゃくこう)」に属します。漢字の通り、体節ごとの足の本数に構造的な違いが存在します。
ムカデは頭部寄りの前側数節を除き、1つの体節から左右に1本ずつ、合計1節あたり2本の足が生えています。体全体が平たいリボン状で、足が外側へ大きく張り出しているため、波打つように地面を這い、人間の歩行速度に迫るほどの素早いダッシュが可能です。また、危険を感じると頭部を持ち上げて威嚇し、触れたものに対して反射的に噛みつく凶暴性を備えています。
対照的にヤスデは、前方の3節程度を除いて、1つの体節から左右2本ずつ、合計1節あたり4本の足が生えています。断面はかまぼこ型や円筒状で、足は体の真下に密集して隠れるように付いています。このため歩行速度は極めて遅く、波のように足を小刻みに前送させながら這うのが特徴です。身の危険を察知すると、頭を内側にしてダンゴムシのように渦巻状に丸まる習性を見せます。攻撃のための牙は持たず、人間に対して噛みつく構造そのものがありません。
さらに混同されやすい第3の存在として「ゲジゲジ(蚰蜒)」が挙げられます。ゲジゲジはムカデと同じ唇脚綱に属しますが、足が極端に長く、触角も細長く発達しており、まるで蜘蛛のようなシルエットを持っています。動きはヤスデやムカデの比ではないほど俊敏ですが、毒性は極めて弱く、ゴキブリやダニを捕食してくれる衛生害虫の天敵(益虫)としての側面を持ちます。見た目の異様さから嫌悪されがちですが、人間を積極的に襲うことはありません。