樋口可南子と篠山紀信が挑んだ表現|伝説の写真集と現在に至る真相

樋口可南子と篠山紀信が挑んだ表現|伝説の写真集と現在に至る真相

樋口可南子と篠山紀信が挑んだ表現|伝説の写真集と現在に至る真相の特集記事を解説します。専門的な知識が詰まっています。

後年のドキュメンタリー番組やインタビュー手記において、樋口可南子は撮影当時の心境を赤裸々に振り返っています。撮影の舞台となったのは、アメリカ・フロリダ半島の最南端に位置するキーウェスト。灼熱の太陽と澄み渡る水辺、瑞々しい自然の中で、撮影はごく少人数の精鋭スタッフのみで行われました。

「30代を迎えた女性の肉体は、20代の頃とは違う陰影と深みを持っている。それを写真家として最も信頼できる篠山さんに残してほしい」という発意は、事務所やプロデューサー主導ではなく、樋口可南子自身の内発的な意思によるものでした。カメラの前に立った彼女は、南国の自然光を浴びながら果実のように瑞々しい裸身を晒し、篠山紀信はファインダー越しにその生命力を捉え続けました。撮影秘話として知られるのは、篠山の「自然体でいい、ただ風を感じてくれればいい」という指示に対し、樋口が自ら進んで海へ入り、波と戯れるようにポーズを重ねていったという現場の熱気です。

当時、樋口可南子のプライベートにおけるパートナーであり、後に1993年に結婚することとなる夫・糸井重里の存在も重要な背景となっています。世間の一部からは「なぜ止めなかったのか」という旧態依然とした声も上がりましたが、糸井は一人の自立した表現者としての樋口の決断を全面的に尊重し、静かに後押ししていました。誰かの所有物としてではなく、一人のプロフェッショナルが自身の意思で表現に挑んだからこそ、あの作品には媚びのない清冽な強さが宿っていたのです。

吉田 誠
著者

吉田 誠

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