「死んでしまおうか…」という、あまりにも衝撃的なつぶやきから始まる『手紙』の歌詞。この一節が提示する切なさと覚悟の重さは、作詞を手がけたなかにし礼の壮絶な人生経験と深く結びついています。戦後の過酷な引き揚げ体験や青年期の苦闘、そしてシャンソンの訳詞を通じて培ったフランス文学的なドラマツルギーが、この数分間の楽曲に凝縮されているのです。
歌詞の中で描かれる手紙は、一方的な別れを告げるだけの道具ではありません。相手への未練と、決して戻らない時間への諦念、そして自らの命を削るほど純粋に誰かを愛してしまった人間の「究極の孤独」が刻み込まれています。なかにし礼は直接的な説明描写を削ぎ落とし、聴く者が自分自身の記憶や痛みを投影できる余白を残しました。だからこそ、半世紀以上が経過した現代のリスナーが聴いても、胸の奥底を直接掴まれるようなリアリティを感じるのです。