古来、神道における神の力には、人々に恩恵をもたらす「和魂(にぎみたま)」と、時に天変地異や死をもたらす「荒魂(あらみたま)」の二面性があるとされてきました。草薙の剣の呪いと噂される現象の本質は、まさにこの荒魂の圧倒的な霊威にあります。
古代の人々にとって、神剣は鑑賞するための工芸品でも、権力を誇示するための道具でもありませんでした。神そのものが宿る依り代であり、正当な祭祀を怠ったり、好奇心から侵犯したりした者には容赦ない災厄が降りかかると信じられていたのです。歴代天皇の歴史を振り返っても、神剣の扱いに不備があった時期には不可解な政変や疫病が相次ぎ、神威への畏れが「祟り」という形で記録に残されることになりました。