時計の針を2014年5月25日に戻します。岩手県滝沢市の「岩手産業文化センター アピオ」で開催されていたAKB48の33枚目シングル『前しか向かねえ』全国握手会会場は、数千人のファンが集まり熱気に包まれていました。事件が発生したのは午後4時55分頃、第6レーンでのことです。
レーン内には当時19歳だった川栄李奈と18歳だった入山杏奈、そして誘導にあたっていた男性スタッフが配置されていました。そこに突如、ノコギリ状の刃物を隠し持った24歳の無職の男が侵入し、無防備なメンバーたちへ切りかかりました。会場は一瞬にして悲鳴と怒号に包まれ、川栄李奈は右手親指の開放骨折および裂傷、入山杏奈は右手小指の骨折と頭部裂傷、制止に入ったスタッフも重傷を負い、盛岡市内の高度救急救命センターへ緊急搬送されました。
裁判資料や当時の捜査報道によると、逮捕された犯人の動機は特定のメンバーに対する怨恨ではなく、「自分の思い通りにならない生活への不満から、人が大勢集まる場所で凶行に及ぼうとした」「AKB48なら誰でもよかった」という極めて理不尽かつ自己中心的な無差別殺傷目的であったことが判明しています。ファンとの直接的な交流を信条としていた「会いに行けるアイドル」の信頼関係を根底から揺るがす、極めて悪質な凶行でした。