宇多田ヒカル『あなた』歌詞の真実|母となった歌姫が託した愛と死生観

宇多田ヒカル『あなた』歌詞の真実|母となった歌姫が託した愛と死生観

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映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』(山崎貴監督、堺雅人・高畑充希主演)の主題歌として制作された本作について、映画のプロットである「黄泉の国へ旅立った妻を救いに行く夫の純愛」に寄り添っていることは論を俟ちません。しかし、宇多田ヒカル自身が当時のインタビューや手記で語った「自分の子どもに対して抱いた感情を初めてストレートに歌詞にした」という証言こそが、本作を解く最大の鍵となっています。

2015年にロンドンで第1子となる男児を出産した彼女は、自らの身体から新たな生命が生まれ出た衝撃と、その圧倒的な存在感を次のように楽曲へ昇華させました。

「肌を重ねて」「名前を呼んで」というフレーズは、表層的には恋人同士のスキンシップを連想させます。しかし、乳児期の我が子を抱き上げ、肌を密着させて名前を繰り返し呼びかける母親のリアルな身体的実感を重ね合わせたとき、言葉の解像度は一気に跳ね上がります。自分自身の命よりも大切な存在がこの世に誕生してしまったことへの歓喜と、それゆえに生じる「もしもこの子を失ったら」という根源的な恐怖が、驚くほど赤裸々に綴られているのです。

鈴木 陽菜
著者

鈴木 陽菜

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