作品を彩る役者陣の圧倒的な存在感も見逃せない。実力派として定評のある日本の女優がヒロイン役を演じ、心の機微を静謐かつ激しく表現している。彼女はこれまで数々の文芸作品やシリアスな劇場映画でキャリアを積んできたが、本作ではこれまでのイメージを鮮やかに覆す体当たりの演技を披露した。静かな表情の裏に秘められた葛藤と、溢れ出る情念のギャップが息をのむほど美しい。
共演を固める俳優陣も一筋縄ではいかない強者ばかりだ。夫役を演じるベテラン俳優の哀愁漂う立ち振る舞いと、彼女を惑わせる青年の危うい魅力。互いの視線が交錯するわずか数秒のカットに、セリフ以上の雄弁なリアリティが宿っている。徹底的に鍛え上げられた演技力があるからこそ、フィクションでありながら観る者の心を揺さぶる。