『黒蜥蜴』の世界観は、劇場舞台にとどまらずスクリーンへと伝播した。江戸川乱歩が描いた怪しくも美しい探偵劇は、三島の卓越したレトリックによって耽美主義の極致へと昇華された。そして、その映画化を手掛けたのが松竹であった。
深作欣二が監督を務め、松竹が配給した映画版『黒蜥蜴』では、美輪が美しき女賊・黒蜥蜴を演じ、三島自身も劇中で日本人形のように美しく剥製にされる青年役として特別出演を果たした。カメラのレンズを通して捉えられた二人の姿は、昭和のサブカルチャーとハイカルチャーが完璧に融合した歴史的瞬間であったと言える。