足の裏に発疹や水泡といった目立った異常が一切ないにもかかわらず、皮膚の奥底から湧き上がるような激しい痒みに悩まされている場合、内科的疾患の存在を警戒しなければなりません。特に臨床の場で警戒されるのが、足の裏のかゆみと肝臓の病気の連鎖です。
肝機能障害、なかでも胆汁の流れが滞る「胆汁うっ滞」や原発性胆汁性胆管炎(PBC)などの疾患では、血液中に胆汁酸をはじめとする代謝産物が逆流・蓄積します。近年の医学研究により、これが全身の知覚受容体を刺激するだけでなく、中枢神経系における内因性オピオイドシステム(μ受容体とκ受容体の不均衡)を狂わせ、激しい難治性の痒みを引き起こす事実が判明しています。この痒みは抗ヒスタミン薬が効きにくく、なぜか足の裏や手のひらなど、四肢の末端部から自覚され始める傾向が顕著です。
もう一つの重大な背景が、足の裏のかゆみと糖尿病サインの合致です。慢性的な高血糖が続くと、ソルビトールの蓄積によって末梢神経が障害され、感覚異常が生じます。初期にはチクチクとした痛みやジンジンする痺れ、そして耐え難い痒みとして知覚されます。さらに、糖尿病性の自律神経障害は足裏の発汗機能を低下させ、極度の乾燥肌(皮脂欠乏状態)を招くため、皮膚のバリア機能が崩壊して外来刺激に無防備となります。「湿疹がまったくないのに足の裏全体が熱を持ち、猛烈に痒い」という状態は、代謝異常が発する重大な警告灯です。