沖縄県中頭郡北中城村大城に佇む邸宅の歴史は、18世紀中頃まで遡る。もともと地頭職(村の領主)を務めていた中村家(豪農として地域社会を支えた家系)が、本島北部からこの地に移住してきたことに端を発する。当時、豪農層にしか構築が許されなかった赤瓦葺きの屋根や、職人の技術が凝らされた柱材は、その権勢と経済力を現代に雄弁に物語っている。
ここで歴史ファンが最も驚くべき事実は、太平洋戦争末期の沖縄戦において本島中部の大部分が壊滅的な被害を受けたにもかかわらず、この屋敷が奇跡的に焼失を免れたという点だ。米軍の進撃ルートや陣地構築の戦火から間一髪で外れたことで、奇跡の歴史的古民家として現代に姿を残すこととなった。戦後、琉球王国の伝統的居住空間の原型を留める極めて貴重な建造物として見出され、1972年に文化庁により国指定重要文化財「中村家住宅」として指定を受けるに至った。