着物を着る際、最も危険なのが「シミやくすみを隠そうとしてファンデーションを厚塗りすること」である。厚塗りされた肌は衿元の白さと衝突し、かえって目元や口元の小じわを目立たせる原因になりかねない。ヘアメイクアップアーティストの嶋田ちあき氏が提唱する立体感と抜け感の理論にも通じるが、大人の和装肌に求められるのは、塗膜の厚さではなく「光のコントロール」だ。
化粧下地には、肌の黄ぐすみを瞬時に補正するラベンダーやピンクベージュ系のコントロールカラーを選択する。顔全体へ均一に伸ばすのではなく、光を集めたい頬の高い位置と額中央を中心になじませ、フェイスラインは薄くぼかす。これだけで自然な陰影が生まれる。
ファンデーションは、薄膜でありながらカバー力と密着感に優れたリキッド、あるいは美容液仕立てのクッションタイプが適している。資生堂などの研究所が報告している大人の肌光学知見に基づけば、微細なパールが光を乱反射させるアイテムを選ぶことで、毛穴や凹凸の影を自然に消し去ることができる。仕上げのパウダーは全顔に叩くのではなく、小鼻や眉周りなど皮脂崩れしやすい部分のみに留めるのが、みずみずしい艶を維持する秘訣だ。