「ルナシーの名曲『I for You』は一体なぜ生まれたのか?」という問いを紐解くには、バンドが直結していた1997年から1998年の過渡期を振り返る必要があります。1997年、人気絶頂の中で突如発表された「活動休止」。各メンバーがソロ活動へ舵を切り、とりわけヴォーカルの河村隆一はソロアルバム『Love』が300万枚を超える歴史的メガヒットを記録しました。世間では「バンドはこのまま解散するのではないか」という憶測が飛び交い、バンドの存続そのものが揺らいでいた時期でした。
しかし、1998年4月のシングル『STORM』で見事に復活を遂げたLUNA SEAは、休止前のアグレッシブで退廃的なロックサウンドから、より普遍的でスケールの大きな「人間としての感情」を鳴らすバンドへと脱皮を図っていました。当時、原曲のデモテープをバンドに提示したのはギタリストのSUGIZOでした。初期の仮タイトル段階から、単なる男女の恋愛ソングではなく、他者への献身や「存在そのものを全肯定する光」をテーマにした楽曲の輪郭が存在していたと当時の音楽雑誌のインタビューでも語られています。
そこに持ち込まれたのが、フジテレビのプロデューサー陣からの熱烈なルナシー アイフォーユー ドラマタイアップのオファーでした。脚本家・北川悦吏子が手掛け、金城武と深田恭子が主演を務めるドラマ『神様、もう少しだけ』。HIV感染という過酷な運命に直面しながらも純愛を貫く女子高生と、心を閉ざした音楽プロデューサーの葛藤を描いたプロットを目にしたメンバーは、楽曲が持つ「脆くも強い生の輝き」との絶対的な合致を直感したとされています。
単なるドラマ用の書き下ろし受託作品ではなく、バンド自身が「他者を受け入れる覚悟」を模索していた精神状態と、ドラマが描こうとした極限の愛が見事にシンクロした結果、ロック史に刻まれるバラードが結実したのです。