ファンが手元で自由に携帯を操作する一方で、ボートレース場内のピットおよび宿舎エリアにおいて、選手に対するボートレース携帯持ち込み禁止の規定は一切の例外なく適用されています。この厳格なルールの背景には、公営競技の根幹である「競走の公正性」を担保し、外部との結託による八百長や情報漏洩を物理的に遮断するという重大な命題が存在します。
選手はレース開催前日の「前検日」にレース場へ入った瞬間から、節間が終了して宿舎を退館するまでの全期間、外部との私的通信が完全に遮断されます。管理区域に入る際、スマートフォンやタブレット、スマートウォッチを含むあらゆる通信機器を専用のロッカーへ預託することが義務付けられています。家族との緊急連絡であっても、日本モーターボート競走会の管理責任者を経由した公的通信のみが許可される徹底ぶりです。
かつて競艇界では、私的通信機器を宿舎内に不正持ち込みし、外部の協力者へレース展開やモーター情報を漏洩させて不正な利益を得ていた競艇選手通信機器不正が発覚し、選手が逮捕・有罪判決を受けるとともに業界全体が深刻な社会的信用の失墜に直面した歴史があります。当時の裁判資料や関係者の証言によると、犯行は厳重な監視の盲点を突いた通信端末の隠匿によって実行されていました。この痛烈な教訓を経て、業界は競艇不正防止対策を根本から見直し、金属探知機を用いた入室検査や宿舎周辺の電波遮断措置、抜き打ち手荷物検査などを制度化するに至っています。