『愛燦燦』というタイトルの読み方は「あいさんさん」です。「燦燦」とは本来、太陽などの光が明るく鮮やかに照り輝く様子を表す漢語であり、「愛燦燦」は「惜しみない愛の光が全身に降り注ぐ情景」を象徴しています。しかし、この楽曲の真の凄みは、同音異義語や類音の言葉を巧みに重ね合わせた三部構成の韻律にあります。
作詞者である小椋佳は、人間の生涯における感情の移ろいを、以下の3つの情景対比で見事に描き出しました。
1番に登場する「雨 潸潸(さんさん)」の「潸(さん)」という漢字は、「潸然(さんぜん)と涙を流す」という熟語があるように、涙が止めどなく零れ落ちるさま、あるいは雨がしとしとと降り続く情景を指します。若い頃に流す、理由の判然としない切ない涙や孤独感の暗喩です。
続く2番の「風 散々(さんざん)」は、吹き荒れる風によって物事が乱れ、思うようにならず打ちのめされる過酷な試練や挫折の日々を表しています。夢破れ、現実に翻弄される壮年期の痛みがここに投影されています。
そして3番で結実するのが「愛 燦燦」です。雨の悲しみ(潸潸)を知り、風の試練(散々)に揉まれた者だけが、最後に日常のささやかな温もりや他者からの慈愛(燦燦)の尊さに気づくことができるという構造です。人生の辛酸をすべて経験した後に「未来は名もなき人が住む星」と歌い上げる境地は、苦難を否定せず丸ごと抱きしめる東洋的な無常観と救済を体現しています。