名曲『ノンフィクション』が生まれた背景には、平井堅自身がプライベートで直面した極めて個人的かつ痛切な出来事がありました。当時の特番インタビューや公式ライナーノーツなどで平井堅本人が語ったところによると、楽曲制作の直前、長年にわたり心を許し合っていた身近な友人が自ら命を絶つという悲痛な別れを経験していました。
ちょうどその時期に舞い込んだのが、TBS系日曜劇場『小さな巨人』の主題歌オファーでした。警察組織の内部対立や人間の業を描くシリアスなドラマに対し、当初プロデューサー側からはバラードの要望があったものの、平井堅の心中にあったのは「今、自分自身の身に起きたリアルな感情から目を背けて、綺麗事のお洒落なポップスを歌うことは絶対にできない」という強い衝動でした。
「その友人に宛てた手紙を書くように歌詞を紡いだ」と後に平井堅が述懐した通り、この曲は商業的なヒットを狙った計算からではなく、表現者として己の痛覚をそのままさらけ出すという必然性から誕生しました。タイトルが『ノンフィクション』と名付けられた理由も、虚飾を一切剥ぎ取った「事実そのもの」「現実の生と死」を刻み込むという決意の表れでした。