映画やSF作品のテーマとしても度々扱われる「地球の自転が止まったらどうなるのか」というシナリオは、物理法則を当てはめると人類にとって破滅的な光景を描き出します。仮にこの回転が「一瞬で急停止」した場合と、「時間をかけて徐々に停止」した場合の2つのパターンでその影響をシミュレーションしてみましょう。
まず、走行中の車が急ブレーキを踏んだ時のように、地球が「一瞬で急ブレーキ」をかけられた場合です。地表の岩盤そのものが静止しても、その上に乗っている建物、海、大気、そして生物には猛烈な慣性の法則が働きます。赤道付近では時速約1,700km、日本でも時速約1,360kmの超音速で、あらゆる物体が一斉に東の空へと投げ出されます。
地表は超音速の暴風と衝撃波によって更地と化し、海洋の海水は大陸を飲み込む数千メートル級の超巨大津波となって陸地を押し流します。地殻にも想像を絶する剪断応力が加わり、地球規模のメガ地震と火山噴火が連鎖。この瞬間的な急停止が起きれば、地表の生命体は文字通り一瞬で壊滅することになります。
一方、現実的な物理法則の枠内で「数百万年かけて徐々に静止する」あるいは「数ヶ月かけてゆっくり停止する」といった場合でも、地球環境は過酷を極めます。
- 半年続く灼熱の昼と半年続く極寒の夜:自転が停止すると、太陽に対する向きは1年の公転周期でのみ変化します。その結果、1日の長さが1年になり、同じ地域が6ヶ月間太陽に照らされ続けて砂漠化し、残りの6ヶ月は氷点下の闇に包まれます。
- 海水の極地方への大移動:自転による遠心力が消滅するため、これまで赤道付近に集められていた海水が重力に従って両極地方へと流れ込みます。赤道周囲には巨大なメガ大陸が露出し、極地方の陸地は完全に水没します。
- 地球磁気圏の消失と宇宙放射線の直撃:地球内部の外核(液体の鉄やニッケル)の対流運動(ダイナモ効果)が自転停止に伴って減衰し、地球を守る地磁気シールドが崩壊。有害な太陽風や宇宙線が地表に降り注ぐことになります。