ネット上の口コミやSNSでは「しっぽまで食べるのが通(つう)の食べ方」と推奨される場面も見受けられますが、医学的・安全面から見ると見過ごせない重大なリスクが存在します。耳鼻咽喉科の臨床現場において、魚骨誤嚥(魚の骨が喉に刺さる症状)の受診原因としてアジは常に上位に挙げられます。
アジの尾びれの根元には頑丈な尾椎骨(びついこつ)があり、油で揚げても完全には軟化しないケースが多々あります。十分に噛み砕かずに飲み込んでしまうと、尖った骨が扁桃腺や咽頭壁に深く刺さり、自力での除去が困難になる危険があります。最悪の場合、粘膜が炎症を起こして化膿したり、内視鏡による摘出手術が必要になる事例も報告されています。
さらに、胃腸機能が未発達な乳幼児や、咀嚼力・嚥下力が低下している高齢者は特に危険です。骨やヒレの硬い繊維は胃酸でも溶けにくく、胃壁を刺激して急性胃炎や重度の消化不良を招く恐れがあります。「栄養があるから残さず食べるべき」という同調圧力に流されず、体質や体調に合わせて判断することが肝要です。