2009年当時の映画館の空気感を知る関係者は、第2章の上映開始直後のざわめきを鮮明に記憶しています。小泉響子が歴史のレポート作成のために図書館へ行き、変わり者の用務員・角田(演・森山未來)と出会い、やがて巨大な陰謀へ巻き込まれていくシークエンス。スクリーンに木南晴夏がアップで映し出された瞬間、劇場内からは思わず吹き出すような笑いと、「本当に響子ちゃんだ」という感嘆の囁きが漏れ聞こえました。
当時全盛期を誇っていたネット掲示板や黎明期のブログメディアにおいて、漫画原作の実写化は常に「改悪」「コレジャナイ」といった猛烈な批判に晒されるのが常態化していました。しかし、木南晴夏が演じる小泉響子に関しては、ネガティブな言説が驚くほど見当たらなかったのです。「奇跡の完全一致」「漫画のページをめくっている錯覚に陥る」といった絶賛の書き込みが連日投稿され、原作ファンコミュニティが率先して彼女の演技を称える異例の事態となりました。
特に平愛梨が演じたシリアスな運命を背負う遠藤カンナとの対比において、木南晴夏は物語の「緩衝材」でありながら、観客が感情移入すべき「唯一の常識的な一般人」としての役割を完膚なきまでに果たしました。観客は彼女の怯えに共感し、彼女の間抜けなリアクションに安堵しながら、重層的なディストピアの世界観へと没入していったのです。