層雲峡温泉の開拓史とともに歩んできた「層雲閣グランドホテル」が、屋号をシンプルに「層雲閣」へと改め、大規模な刷新を遂げた背景には、全国の老舗温泉地が直面する構造転換と資本の世代交代があります。かつて団体旅行全盛期に増改築を重ね、威容を誇った大型旅館モデルは、個人旅行主導への市場シフトや設備の老朽化、さらに感染症拡大による観光需要激変の荒波を直に受けました。
転機となったのは、運営会社変更の経緯にあります。埼玉に本社を置き、ホテル・リゾート事業を急速に拡大させていた通信販売大手ベルーナグループが事業を承継。ホテル運営子会社であるグランベルホテルグループのノウハウを注入し、長年親しまれた屋号から「グランドホテル」を外し、創業時の原点回帰と現代的リゾートの融合を掲げて層雲閣リニューアルプロジェクトを敢行しました。
この事業承継において注目されたのは、単なる看板の掛け替えにとどまらない大胆なテコ入れです。数億円規模の投資によってエントランスロビー、ビュッフェレストラン、高層階の客室フロアが集中的に改装され、往年の重厚感漂う和風大型旅館から、木目と間接照明を多用した洗練された山岳リゾートへと生まれ変わりました。現地を訪れたリピーターからは「昭和の巨大温泉ホテルの面影を残しつつも、パブリックスペースの居心地が格段に上がった」という驚きの声が上がる一方、長年の常連客の間では伝統的なしつらえの縮小に対するノスタルジーも混在しています。