コミックス最終15巻(第112話)における最大の焦点は、紆余曲折を経てすれ違い続けた江戸川音と神楽木晴の恋の行方でした。核心から明かすと、2人の想いは完全に通じ合いますが、正式に「付き合う」と明言される決定的なラブシーンは描かれないまま物語は幕を閉じます。
物語終盤、音は自らの未来を見据えてアメリカへの留学を決断します。かつてのように周囲の環境に翻弄される「守られるヒロイン」ではなく、一人の自立した女性として歩み出す道を選んだ音。一方の晴は、自らの不甲斐なさや父・神楽木巌との確執に真っ向から向き合い、神楽木グループの後継者として、そして一人の男として英徳学園を守る覚悟を固めていました。
出発の日、空港へと向かう音に対し、晴は仲間たち(C5)に背中を押されながら全力で彼女のもとへと疾走します。かつて道明寺司に憧れ、ヘタレと揶揄されながら虚勢を張っていた少年が、ただ一人の愛する女性のために泥臭く走る姿は、本作屈指のエモーショナルな名場面です。
ギリギリのところで再会を果たした2人。晴はこれまでの迷いをかなぐり捨て、音への揺るぎない想いをストレートに告白します。音もまた、自らの心の中にあった晴への偽らざる愛を受け止め、晴の胸へと飛び込みます。感情の交感、魂の結びつきという点では間違いなくハッピーエンドです。
しかし、少女漫画の王道である「恋人同士としての甘いエピローグ」や「数年後の再会・結婚」といった描写は一切描かれませんでした。「俺たちの物語はここから始まる」という晴の力強いモノローグとともに、未来への希望を漂わせたまま暗転する幕引き。この余白の多さこそが、長年読者の間で「付き合っているのか、それとも未来への約束に留まったのか」という解釈論争を巻き起こす引き金となりました。