まず押さえておくべきは、アパレル業界の平均年収が「業界全体」で見ると低いという事実だ。厚生労働省の賃金構造基本統計調査や業界団体の集計を総合すると、アパレル・繊維関連業種の平均年収はおおむね380万〜450万円のレンジに収まる。これは全産業平均のおよそ500万円前後を大きく下回る水準である。ただし、この数字は販売員や倉庫スタッフなど非正規・短時間労働者を多く含むため、正社員だけに絞ると話は少し変わってくる。
2026年の特徴として挙げられるのは、アパレル大手が相次いでベースアップに踏み切っている点だ。公式発表資料によると、一部のSPA(製造小売業)企業では初任給を月給25万円前後に引き上げ、販売職でもインセンティブ制度を拡充する動きが見られる。背景には、人手不足の深刻化と、ECシフトに伴うデジタル人材の獲得競争がある。つまり「アパレル=薄給」という従来の常識は、職種と企業規模によって大きく揺らぎ始めているのだ。
ここで注意したいのは、平均年収には残業代や賞与が含まれる点である。アパレル販売員の基本給は20万円前後と低めでも、繁忙期の残業や店舗インセンティブで手取りが増えるケースは少なくない。一方で、残業時間が減少傾向にある2026年は、基本給そのものの底上げがなければ年収は伸びにくい構造になっている。