甲府地方裁判所で行われた公判において、最も傍聴席の関心を集めた局面の一つが、証人として出廷した母親への証言尋問でした。法廷に現れた母親の証言は、息子を救おうとする一般的な情状証人の姿勢とは大きく異なる冷淡さを帯びていました。
母親は弁護側の質問に対し、遠藤が抱えていた悩みや学校での孤立について「そこまで深く把握していなかった」「自分自身の生活で手一杯だった」と淡々と回答。事件を起こした息子に対する深い謝罪や親としての監督責任を痛切に語る場面は乏しく、法廷内には重苦しい空気が漂いました。
被告席の遠藤は、母親の冷徹な証言をうつむきながら聞き入る様子を見せ、公判中に母親と視線を交わすことはほとんどありませんでした。このやりとりは、母子関係が事件前から完全に破綻しており、少年が最も頼るべき存在であったはずの母親との絆が、すでに修復不能なまでに失われていた事実を白日のもとに晒す結果となりました。