若手社員が企画会議やクライアントワークで悪気なく「そもそも、このターゲット設定はどうなんでしょうか?」と発言し、上司の表情を曇らせる光景は珍しくありません。なぜ「そもそも」は目上の人や顧客に対して使うと重大なマナー違反とされるのでしょうか。
理由は、この言葉が持つ「不可逆的なちゃぶ台返し機能」と「上下関係の逆転(マウンティング)」の心理的誘導にあります。前述の通り、「抑々」は相手の話を一度手で制止する意味合いを帯びています。目上の人やチームが時間をかけて積み上げてきた議論の最中に「そもそも」を投下することは、無意識のうちに以下のようなメッセージを相手に突きつけているのと同じです。
「あなたがこれまで進めてきた議論は、根本から的外れです」
「物事の本質が見えていないあなたに代わって、一段高い視点から私が教えてあげましょう」
組織心理学において、対話における「承認の欠如」は防衛反応を呼び起こす最大の要因とされます。ビジネスコミュニケーション調査機関のヒアリングデータによれば、会議中に反論を受けて不快感を覚えた管理職の約74%が、「内容の不一致そのものよりも、前提や過去の労力を頭ごなしに否定されたニュアンスに強いストレスを感じた」と回答しています。「そもそも」は、発言者の意図がどうあれ、相手の積み上げを無下にする破壊的トーンを帯びてしまうのです。