紅白の歴史を俯瞰する「紅白歌手歴代一覧」を紐解くと、番組の主役と権力の重心がどのように移行してきたかが如実に読み取れます。その象徴が「紅白歌合戦歴代トリ歌手」の顔ぶれです。
昭和から平成前期にかけて、大トリといえば北島三郎、美空ひばり、五木ひろし、石川さゆり、森進一といった演歌・歌謡界の巨頭が務めるのが鉄則でした。日本人の情念や郷愁を呼び起こし、視聴率が50〜60%を超えていた時代の「国民的一致点」として機能していたのです。しかし平成中期以降、SMAPや嵐などの国民的アイドルグループがトリを務めるようになり、2020年代以降はMISIAや福山雅治といった卓越した歌唱力と幅広い世代への求心力を持つ実力派アーティストが定着しました。これは、紅白が「演歌のための大舞台」から「全世代型ポップスの殿堂」へと明確に舵を切った証拠です。
また、紅白のキャスティングにおいて欠かせないピースとなったのが「紅白歌合戦特別企画枠」です。この枠は、紅組・白組という勝敗の枠組みにとらわれず、桑田佳祐、松任谷由実、竹内まりや、長渕剛といったメガアーティストや、海外の大物ミュージシャンを招聘するための特例ルートとして確立されました。「勝敗を競う演出には乗りたくない」「NHKホール以外の別会場や中継で歌いたい」「自作のメッセージをノーカットで伝えたい」という大物の要求を呑みつつ、番組後半の瞬間最高視聴率を叩き出すための高度な政治的妥協点でもあります。
さらに、番組の成否を分けるのが緻密に計算された「紅白歌手曲順タイムテーブル」です。前半(第1部)は若年層を引きつけるアップテンポなバイラルヒットや初出場組を並べ、21時のニュースを挟んだ後半(第2部)中盤以降に特別企画枠や国民的ヒット曲、そして23時前後に歴代トリクラスの重厚なバラードを配置する構成が取られます。裏番組の配信特番や他局のカウントダウン番組への視聴者流出を食い止めるため、曲順は秒単位の計算のもとで決定されています。