「私立と公立の違いはお金の問題にすぎない」という言説は、現場を知る教育関係者の間では完全に否定されています。文部科学省の学習指導要領という厳格な枠組みのなかで均質かつ公平な教育を提供する公立に対し、私立は建学の精神に基づき、独自のカリキュラム編成権を行使して特色ある教育を展開しています。
その最たる違いがカリキュラム自由度です。公立校では検定教科書を用い、規定のコマ数を厳密に消化することが義務付けられています。一方で私立校は、独自の副教材や海外の先端教育プログラムを大胆に導入し、英語での探究学習や高度なSTEAM教育を早期からカリキュラムに組み込むことが可能です。とりわけ中高一貫校では、中学3年次で高校内容に入り、高校2年次までに全課程を修了させて残り1年を共通テストや二次試験対策に専念させる編成が標準化しています。
さらに見逃せないのが教員異動の有無がもたらす組織風土の差です。公立学校の教員は自治体の規定により、おおむね3年から7年のサイクルで定期異動を繰り返します。どんなに優れた熱血教師や生徒から信頼の厚い学年主任であっても、数年経てば他校へ去らざるを得ず、指導方針や部活動の指導体制が突然リセットされるリスクを常に抱えています。
これに対し、私立校の教職員は学校法人に直接雇用されているため、基本的に終身雇用が前提です。20年、30年にわたり同じ校風を守り続けるベテラン教員が多数在籍し、教頭や校長へ昇進しながら伝統的な教育ノウハウを次世代へ継承しています。「自分が学んだ母校に子どもを通わせ、同じ先生に教わった」というエピソードが私立出身者の間で頻繁に語られるのは、この身分保障と定着性の高さゆえです。反面、公立は異動によって組織の硬直化を防ぎ、多様な価値観を持つ指導者に出会える流動性という独自の強みを持っています。