本作のドラマツルギーを強固に支えているのが、極めてリアルに描かれた『余命5日の天才科学者』の登場人物たちによる心理的相克です。単なる記号的な善悪にとどまらず、人間の承認欲求や知性に対するコンプレックスが生々しく描写されています。
主人公の神崎蓮は、IQ200を超える天才でありながら、他者の悪意や権力闘争に対して極めて無防備な純粋培養の学者として描かれます。この「知の巨人でありながら情緒的には無防備」という設定が、物語序盤の理不尽な搾取に対する視聴者の感情移入を決定づけました。
対する研究所長の九条修蔵は、かつて自身も研究者として名を馳せながら、加齢とともに創造性を喪失し、経営と政治力に逃げた人物です。心理学における「代理的自己愛の破綻」を抱えており、自らが成し遂げられなかった偉業を軽々と達成する蓮に対して、強烈な羨望と憎悪を募らせていました。蓮を裏切った動機は、単なる金銭欲以上に「蓮の知性を奪うことで、自らが神になりたかった」という歪んだコンプレックスに起因しています。
また、元婚約者の水野美香は、秀才でありながら天才(蓮)の領域に到達できない絶望を抱えた研究員でした。彼女の裏切りは、科学界における「二番手の悲哀」と自己保身の結末であり、視聴者に対して人間の脆弱さと醜悪さを容赦なく突きつけています。