DTM業界において長年語られる現象に、「プラグインコレクター症候群(Plugin GAS: Gear Acquisition Syndrome)」があります。次々と新しい音源を買い足すものの、プリセットを数回試聴しただけで満足し、結局1曲も完成しないまま次のセールを迎えてしまう心理状態です。行動経済学における「所有効果(手に入れただけで能力が上がったと錯覚する心理)」や「選択のパラドックス(選択肢が多すぎると逆に創造性が阻害される現象)」が、Kompleteのような巨大バンドルでは顕著に表れます。
この心理的罠に陥らず、自身の音楽活動を加速させるための判断基準を提示します。
ネイティブ・インストゥルメンツ製品を今すぐ導入すべき人
- 商業劇伴、映像音楽、ゲームBGMを制作する作編曲家:あらゆる楽器の音色を即座に呼び出せるライブラリの広大さが、納期短縮の生命線となるため。
- 歌モノのポップスや劇伴でKontakt対応の高品質サードパーティ音源を使いたい人:Spitfire等のシネマティック音源を動かすためのプラットフォームとしてフル版Kontaktが不可欠なため。
- Komplete KontrolキーボードやMaschineなど、ハードウェアと統合された快適な制作フローを構築したい人。
今は購入を見送り、慎重になるべき人
- 特定の音楽ジャンル(例えば「ボーカロイド楽曲専門」「生音メインのロックバンドのミックスのみ」など)に特化している人:必要なギター音源やドラム専用音源(Superior Drummer等)を単体で揃えた方が、遥かにクオリティの高い結果を得られるため。
- PC内蔵ストレージの空き容量が100GB以下で、外付けSSDの導入を考えていない人:導入直後にストレージエラーに見舞われ、制作環境そのものを圧迫するリスクが高いため。
- 「これを買えば曲が劇的に上手くなるはずだ」という幻想を抱いているDTM完全初心者:まずはDAW付属の標準音源を使い倒し、何が足りないのかを明確に言語化できるようになってからサマーセールを待つのが合理的です。