事故の相手方が「警察だけは呼ばないでくれ」と懇願してきたり、逆に威圧的な態度で現場示談を迫ってきたりする場合、そこには必ず当事者側の後ろ暗い事情が潜んでいます。相手が警察を極度に嫌がる背景には、以下のような違法状態の隠蔽が潜んでいるケースが大半を占めます。
- 無免許運転または免許停止期間中の運転:事故の通報によって警察官に免許証の提示を求められれば、即座に無免許運転が発覚し逮捕されるため。
- 飲酒運転・酒気帯び運転の発覚回避:呼気検査を受ければ一発で免許取消や重い懲役刑が科されるため、アルコールが抜けるまで警察との接触を意図的に避けようとする。
- 社用車での事故による会社への隠蔽:業務中の事故報告義務を怠り、会社の処分や解雇を恐れて個人間の現金示談で闇に葬ろうとする心理。
- 指名手配・不法滞在・その他犯罪歴:身元照会によって自身に及ぶ法的追及を恐れている。
このような相手の提案に安易に乗ってしまうドライバーの心理的背景には、人間行動学で言われる「正常性バイアス」と「コンフリクト(対立)回避の防衛機制」が働いています。突発的なアクシデントに見舞われた脳は、「これくらい大した事故ではない」「大事にしたくない」という過小評価の心理を急速に形成します。さらに、怒りや焦りをあらわにする相手を前にすると、「穏便にその場を収めたい」という同調圧力が働き、理不尽な現場示談を受け入れてしまうのです。
しかし、法律の専門家は「警察なしの示談」を絶対的な禁じ手として警告しています。民法上、現場で一度成立した口頭の合意であっても、錯誤や強迫、後からの予期せぬ損害発覚によって容易に無効主張がなされます。相手の「警察を呼ばないでほしい」という懇願に少しでも違和感を覚えたら、同情や同調を完全に断ち切り、その場で直ちに110番通報を行うことが鉄則です。