ネット検索で頻繁に見かける「ためしてガッテン 糖尿病は治る」というフレーズに対し、医療関係者が口を揃えて指摘するのが「完治」と「寛解(かんかい)」の混同です。番組が伝えた糖尿病完治の真相を探ると、制作者側が意図したのは「元通りの不摂生な生活に戻っても一生再発しない完治」ではなく、「生活習慣の劇的な見直しによって、薬に頼らず血糖値が安定する状態を作れる」という希望のメッセージでした。
医学の世界において、感染症のように原因物質を体内から完全に排除できる病気とは異なり、2型糖尿病において「完治(Cure)」という言葉は使われません。米国糖尿病学会(ADA)や欧州糖尿病学会(EASD)、そして日本糖尿病学会が提唱する糖尿病寛解の基準では、糖尿病治療薬を少なくとも3か月以上中止した状態でHbA1cが6.5%未満を維持できている状態を「寛解(Remission)」と定義しています。
つまり、検査数値がどれほど健常者と同じレベルまで下がったとしても、過食や運動不足を再開すれば再び高血糖へと逆戻りします。「病気がきれいさっぱり消え去る」という意味での治癒はあり得ないものの、「治療薬なしで健康長寿を全うできる状態」を目指すことは十分に現実的な目標です。この決定的なニュアンスの違いを取り違えた結果、「ガッテンで治ると言っていたからもう通院をやめた」という深刻な医療事故を生む土壌が作られてしまいました。