彼のものづくりの根底には、金沢という土地が持つ深い文化覚醒の歴史がある。かつて研修生として滞在した金沢卯辰山工芸工房での日々が、表現者としての大きな転換点となった。伝統技術の基礎を徹底的に叩き込みながらも、型にはまらない自由な美意識を芽生えさせた時期だ。
金沢市は加賀百万石の城下町として、茶の湯や蒔絵、金箔など高度な工芸文化を育んできた土地柄である。その洗練された風土の中で磨かれた金属工芸への情熱は、独自のエイジング加工技術を生み出した。あえて新品の輝きを抑え、何十年も大切に使われてきたかのような落ち着いた渋みを表現する技法は、彼の代名詞となっている。