「組の看板を出してシノギをやるやつなんて、今はただのバカですよ」
都内の雑居ビルの一室で取材に応じた50代の元暴力団幹部・A氏は、冷え切った缶コーヒーを握りしめながら自嘲気味に吐き捨てた。数年前に偽装離脱ではなく正式に組を抜けたという彼の手には、かつての指詰め跡が残る。だが、彼が語る現役組員たちの現実は、暴力の恐怖よりも「日々の小遣い稼ぎ」の困窮に満ちていた。
かつて資金源の主力を占めた公共事業への食い込みや、みかじめ料の徴収は、全国暴力追放運動推進センター(暴追センター)と地域社会の徹底した連携によって完全に遮断された。店側がみかじめ料を支払うこと自体が勧告や公表の対象となるため、飲食街からの吸い上げは成立しない。
そこで彼らが流れた先が、反社会的勢力・地下経済が複雑に絡み合うグレーゾーンビジネスだ。産業廃棄物の不法投棄仲介、高齢化が進む地方の空き家解体ビジネス、果てはリフォーム詐欺や特殊詐欺の元締め業務まで、暴力団の影を極力隠した「ステルス型のシノギ」が主流となった。暴力という物理的脅威を行使するのではなく、制度の盲点や情報弱者を食い物にする知能犯的な手口への完全なシフトである。