スマートフォンの育児記録アプリやSNSを開けば、「生後2ヶ月でこんなにおしゃべりしてくれた」「クーイングが可愛すぎる」といった動画がタイムラインに溢れています。そうした華やかな発信を目にするほど、我が子の静けさに孤独な恐怖を覚える保護者は少なくありません。
育児相談コミュニティや大手Q&Aサイトに寄せられる当事者の手記には、切実な悩みが綴られています。
「生後2ヶ月半の娘が、泣く以外まったく声を出さない。周りの同じ月齢の子はみんな『あー』『うー』と言っているのに、うちの子は口をぽかんと開けて見つめるだけ。私の声かけが足りないのだろうか」(20代・初産婦の手記より)
「生後3ヶ月になってもクーイングしない理由を検索しては、自閉症や難聴の文字を見て夜中に涙が止まらなくなる。話しかけてもクーイングに反応しない原因が分からず、育児ノイローゼ寸前だった」(30代・保護者の告白)
小児臨床の現場を取材すると、医師や保健師は口を揃えて「クーイングしない理由の大半は、疾患ではなく気質と身体成熟のスピード差にある」と指摘します。赤ちゃんの発達特性は一様ではありません。声を発することよりも周囲の景色や親の顔を「じっと見る(視覚的探索)」ことにエネルギーを注いでいる観察型の赤ちゃんもいれば、身体をバタバタと動かす運動面の発達が先行している赤ちゃんもいます。クーイングというひとつの指標だけに囚われ、親が深刻な表情で接してしまうことこそが、現場で最も危惧されている問題なのです。