毎朝4時半、仕込みのために厨房に明かりが灯る。かつて高度経済成長期に労働者たちの胃袋を支えるために開店したこの店は、地域に根ざした大衆食堂として歴史を重ねてきた。効率化やコスト削減が叫ばれる現代の外食産業において、手間暇を一切惜しまない職人気質を守り抜いている。
「既製品の調味料を混ぜるだけの商売なら、自分がやる意味がない」と、気骨ある笑みを浮かべるのは二代目の店主だ。毎朝仕入れられる新鮮な食材と、厳選された国産の節類から取る天然の出汁。近年、日本飲食業協会の意識調査でも個人経営の良質なお店が再評価されているが、その潮流を何十年も前から先取りしていたと言える。