日本の参拝文化において、圧倒的な人気を誇るのが五円硬貨だ。「ご縁」に通じるその音の響きに加え、中央に穴が開いているデザインが「先が見通せる」という吉祥を連想させる。1枚投じれば「ご縁がある」、2枚重ねて10円分(5円×2)にすれば「重ね重ねのご縁」、4枚で20円分なら「よいご縁」といった具合に、数字の組み合わせで祈りの意味を変化させる文化が根強く定着している。
同じく穴が開いた50円硬貨も「五重のご縁」や「50倍のご縁」を授かる吉銭として重宝されてきた。11枚の5円硬貨で55円(午年や重なるご縁)、あるいは15円(十分なご縁)など、語呂合わせのバリエーションは実に多彩だ。こうした風習は、言葉に宿る霊力を重んじる「言霊」の思想が、日常の貨幣制度と結びついた日本の伝統文化のユニークな顕現といえる。