無一郎の刀を語る上で欠かせないのが、刀鍛冶との深い人間ドラマです。無一郎の日輪刀の初代作り手は鉄井戸(てついど)という高齢の刀鍛冶でした。鉄井戸は、記憶喪失によって周囲に心を閉ざし、自身の限界を超えてがむしゃらに刀を振り続ける無一郎の悲痛な孤独を誰よりも理解し、心臓の病で他界する直前まで無一郎の体を気遣っていました。
鉄井戸の死後、刀の打ち手を引き継いだのが伊之助の刀も担当していた鉄穴森鋼蔵(かなもりこうぞう)です。刀鍛冶の里が上弦の鬼に急襲された際、鉄穴森は命がけで鉄井戸の遺志を受け継いだ「無一郎専用の刀」を守り抜きました。
鉄井戸が遺した詳細なカルテ(無一郎の筋肉の使い方や太刀筋の癖を記した手記)をもとに鉄穴森が打ち直した刀を手にした瞬間、無一郎は本来の力を完全に解放。上弦の伍・玉壺(ぎょっこ)を単独撃破する原動力となりました。職人と剣士の魂の共鳴が、刀という物質を超えて無一郎の精神的覚醒を支えたのです。