黒川雅之氏の代表作として世界中に知られているのが、1970年代初頭に発表された「GOM(ゴム)」シリーズです。灰皿、コースター、文房具、時計などで構成されるこのプロダクト群は、それまで工業用の下請け素材とみなされていた「合成ゴム」を主役に据え、ステンレスや真鍮と見事に融合させました。
ゴム特有のしっとりとした触感、黒の深み、そして金属の硬質なエッジが織りなすコントラストは、発表当時世界に衝撃を与えました。このシリーズはニューヨーク近代美術館(MoMA)やデンバー美術館の永久収蔵品(パーマネントコレクション)に選定され、黒川雅之の名を世界のデザイン史に永遠に刻むことになります。
プロダクトにおける実績はこれにとどまりません。
- 時計コレクション:カオス理論を着想源にしたウォッチ「CHAOS」や、無駄を極限まで削ぎ落とした置時計「DOMANI」など、時間の概念を視覚化する名作を多数発表。
- 家具・インテリア:革とスチールを組み合わせた椅子「IN-PREP」シリーズ、南部鉄器の質感を生かしたティーウェア「IRONY」など、日本の伝統工芸と現代工業の高度な融合を実現。
- 照明器具:空間に柔らかな光の彫刻を生み出す名作照明「LAVINIA」など、陰影を巧みに操る空間装置を設計。
これらの作品群に通底しているのは、視覚的な美しさだけでなく、指先で触れた瞬間に伝わる「素材の声」を形にする卓越した造形力です。