毎月1日午前0時、オンライン予約システムが開放されると同時にサーバーが悲鳴を上げる。わずか数十秒で翌月の全席が埋まる光景は、今や恒例のニュースとなった。SNSでは「奇跡的に予約をもぎ取る裏ワザ」が飛び交い、キャンセル待ち通知アプリの登録者は数千人に達している。
しかし、店側は席数を増やすことも、多店舗展開を急ぐこともしない。目の届く範囲、己の手で焼き上げられる限界の8席。大量生産・高速消費の時代に真っ向から抗うこの頑なな姿勢こそが、現代人の飢餓感をさらに煽り立てる。一度この席に座り、奇跡のような焼き加減を体験した者は、退店したその足で次の予約方法を考え始めるのだ。