韓国ドラマ屈指の人気護衛官であるパク・テスの「死」がこれほど強く囁かれる最大の理由は、物語終盤に押し寄せる主要キャラクターたちの過酷な別れと、視聴者の記憶の錯覚にあります。
第1の要因は、サンの側室となったヒロイン、ソンヨンの死因とそれに伴う深い悲劇性です。ソンヨンは第73話で肝硬化(肝硬変)を患い、幼い我が子に続いて帰らぬ人となりました。幼少期に絵師のソンヨン、世孫のサン、そしてテスの3人が交わした「生涯の友情の誓い」はドラマの根幹でした。その3人組の要であったソンヨンの早すぎる死があまりに衝撃的だったため、後追いでドラマを視聴した層や記憶が曖昧になった層の間で、「幼なじみトリオの誰かが他にも命を落としたのではないか」という不安がテスの死亡説へとすり替わっていった経緯があります。
第2の要因として挙げられるのが、劇中でテスが幾度となく直面した「絶体絶命の重傷シーン」です。サンを狙う老論派の刺客たちとの死闘、反乱軍の鎮圧など、テスは幾度も自らの肉体を盾にしてサンを守り、生死の境をさまよいました。大量に出血し意識不明に陥る緊迫したエピソードが何度も描かれたことで、視聴者の脳裏に「テスが戦死した決定的な瞬間」があったかのような残像を植え付けた側面は否定できません。
そして第3の要因は、主人公である正祖(サン)の崩御と「殉死」を巡る連想です。第77話(最終回)で過労と病により47歳の若さで世を去るサンに対し、護衛武官として人生のすべてを捧げてきたテスが「主君の後を追って自刃したのではないか」「サンを守りきれずに散ったのではないか」という先入観が、検索行動として定着してしまったと分析されています。